最近の市場アナリストは、イスラエルとイランの紛争が中東の化学産業に大きな影響を与えたと述べている。イスラエルがイランの化学施設を直接攻撃したわけではないが、それでも紛争の間接的な影響により、イランは化学生産施設の大半を閉鎖するに至った。一方、イランはイスラエルの石油精製と石油化学産業を標的にし、多くの生産設備の稼働停止を余儀なくされた。現在、双方は停戦合意を履行しているものの、この地域の多くの化学生産施設は停止したままである。中東の肥料、原料、化学品市場の変動と不確実性はまだ続いている。
イスラエルのバルザングループは、イスラエルではハイファにある製油所がイランによる2回目のミサイル攻撃を受けて操業を停止したと発表した。また、発電所への攻撃のため、子会社のカーメル・オレフィン・カンパニーのハイファ製油所で稼働している複数のオレフィン・ポリオレフィン工場が操業停止状態にあるという。現時点では、同社および子会社のすべての設備が停止している。Carmel Olefins Companyのウェブサイトによると、同社は年間24万トンのエチレン生産能力と13万5000トンのプロピレン生産能力を持つ蒸気分解装置を運営している。また、年産18万トンのプロピレン生産能力を追加する複合分解装置も有しており、川下には年産18万トンのポリエチレン(PE)と年産40万トンのポリプロピレン生産能力を有している。
一方、イランでは、イスラエルによる石油・ガス上流部門、製油所、送電網、港湾インフラへの攻撃により、多数の化学工場も操業停止に追い込まれている。最も深刻な事件は、6月14日、イスラエルの無人偵察機が、イランのアサルイ化学生産センターに接続されていたサウスパルスガス田のガス処理施設を攻撃したことである。イラン当局は、さらなる攻撃を防ぐため、アサルイエ地区の化学工場に生産停止と貯蔵タンクからの危険物質の除去を命じた。アサルイエ地区のマルジャン石油化学メタノール工場は6月15日に操業を停止した。情報筋によると、マルジャン社の工場のメタノール生産能力は年間165万トンである。
S&P Global Commodity Insightsのアナリストによると、アッサルイェのザグロス石油化学工場を含むイランの他の3つのメタノール工場も閉鎖された可能性があるという。市場関係者によると、イスラエルがサウスパルスガス田への攻撃を含むイランのエネルギーインフラへの空爆を開始した後、イランのメタノール施設も天然ガス原料の不足に直面したという。同筋によると、イラン全土のアンモニア工場も生産を停止しているという。6月16日、アンモニアと窒素肥料などの下流製品の生産が停止された。
S&Pグローバル・コモディティ・インサイトのデータによると、化学品はイランにとって原油と石油精製品に次ぐ第3位の輸出部門である。石油以外の輸出収入の約3分の1を占めている。関連データによると、イランには、天然ガス、コンデンセートオイル、天然ガス液体を含む豊富な現地原料に基づく約85の化学工場がある。これらの工場では、エチレンやポリエチレン、メタノール、アンモニア、芳香族などの一般化学品や誘導品を生産している。現在、イランには12基の分解装置があり、合計年間エチレン生産能力は788万トンで、中東のエチレン生産能力の23%を占め、サウジアラビアに次ぐ第2位のエチレン生産国となっている。また、イランには13のメタノールプラントがあり、合計年間生産能力は1,738万トン、21のポリエチレンプラントがあり、合計年間生産能力は445万トンである。
